遺言書保管制度に関するQ&A

令和2(2020年)年7月10日から、自筆で書いた遺言書を法務局で保管する「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。

法務省「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」

法務局における遺言書の保管等に関する法律

法務局における遺言書の保管等に関する政令

法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令

法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令

法務局における遺言書の保管等に関する政令

(自筆証書遺言)
民法第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)
(遺言書の検認の適用除外)
第11条 民法第1004条第1項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。


●本制度を利用した場合の自筆証書遺言書は、検認は不要

今までの自筆証書遺言で相続登記をするには、家庭裁判所へ遺言書の検認を受ける必要がありましたが、本制度を利用した場合、検認は不要

(遺言書の検認の適用除外)
第11条 民法第1004条第1項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

(遺言書の検認)
民法第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。


●自筆証書遺言書保管制度における通知について

 通知には、「関係遺言書保管通知」と「死亡時の通知」の2種類がある。

1.関係遺言書保管通知とは

 遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付があったときに法務局(遺言書保管官)が、他の相続人・受遺者・遺言執行者に対して、遺言書を保管していることが通知される(遺言書保管法9条5項)(※)

法務局における遺言書の保管等に関する法律第9条5項 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人並びに当該関係遺言書に係る第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

(※)他の相続人への通知は、閲覧・交付申請時の添付書類に、法定相続情報一覧図の写し又は、遺言者の出生時から死亡時までの全ての除戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本等の提出が求められている。

2.死亡時の通知

 1で、閲覧・交付申請等がない場合は、遺言者が死亡し、相続が開始した事実がわからないので、

 関係遺言書保管通知を補うものとして,遺言者の死亡の事実を把握することが可能となる仕組みによって,遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合には,あらかじめ遺言者が指定した者に対して,遺言書が保管されている旨を通知することとしました。この死亡時の通知については,令和3年度以降頃から本格的に運用を開始することとしています。
 この通知は,希望する遺言者のみについて実施することとし,遺言書の保管の申請時に,次に掲げる様式により,同意事項に同意し,通知対象者の指定をしていただくこととなります。
 通知対象者は,遺言者の推定相続人並びに遺言書に記載された受遺者等及び遺言執行者等から1名を指定することとなります。まずは,その方に遺言書が保管されている事実が伝われば,その他の相続人等にも確実にそのことが伝わると思われるような立場の方や,確実に保管の事実を伝えたい方を選択していただくことをおすすめします。
(法務省より)


目次


法務省の法務局における自筆証書遺言書保管制度についてのQ&AのPDFより(※)

その他のQ&A

法務局(遺言書保管所)で遺言書の書き方を教えてくれますか。

遺言書の作成に関するご相談には一切応じられません。

遺言書の様式については、注意事項をご覧いただき、あらかじめご自身で作成の上、来庁いただくようお願いします。

遺言書の様式について、用紙に模様があるのですが、申請可能ですか。

その模様が文字の判読に支障がないものであれば、申請可能です。

遺言書を何色か色分けして書いてもよいですか。

保管されている遺言書について、相続人等がその内容を確認する手段として遺言書情報証明書の交付の請求や遺言書の閲覧があります。

閲覧については原本とモニターによる方法があり、色分けを確認することができますが、遺言書情報証明書は白黒で出力されるため色分けを確認することができません。

したがって、本制度を利用する場合、遺言書を色分けして作成することはお勧めしません。

保管制度が開始する前に作成した遺言書でも預かってもらえますか。

作成した遺言書が所定の様式(注意事項参照)に合うものであれば、保管申請することが可能です。

申請書・請求書は、どこでもらえますか。

法務省ホームページに掲載している様式をダウンロードして入力することで作成いただくことができます。

なお、法務局(遺言書保管所)の窓口でも入手可能です。

保管の申請をしたいのですが、遺言者本人が病気のため法務局(遺言書保管所)へ出頭できない場合はどうすればよいですか。

本人出頭義務を課していることから、この場合には、本制度をご利用いただけません。

なお、介助のために付添人に同伴していただくことは差し支えありません。

保管の申請時には、遺言書を封筒にいれたまま法務局(遺言書保管所)へ持参すればよいですか。

申請時には遺言書原本のみをお出しいただくことになります。
封筒は不要です。

本人確認について、顔写真付きの身分証明書を所持していない場合はどうすればよいですか。

本人出頭義務を課していることから、なりすましを防止する必要があるため、顔写真付きの身分証明書の提示が必須となります。

例えば、マイナンバーカードであれば、誰でも取得できますのでご検討願います。

保管の申請の手数料について、保管年数に応じて手数料も増えるのですか。

保管申請の手数料は、その後の保管年数に関係なく申請時に定額(遺言書1通につき、3,900円)を納めていただきます。

手数料納付のための収入印紙はどこで購入すればよいですか。

各法務局(遺言書保管所)庁舎内の収入印紙の販売窓口又はお近くの郵便局等で販売しています。

詳しくは、申請・請求予定先の法務局(遺言書保管所)にお問い合わせください。

遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けたことを家族に伝えておいた方がよいですか。

法務局(遺言書保管所)に預けたことをご家族(相続人となり得る方)に伝えておいていただくと、相続開始後、ご家族が、スムーズに遺言書情報証明書の請求手続等を行うことができます。

保管証(※)を利用すると確実です。

(※コメント)手続きが終わると保管証が交付されます。

保管証を紛失した場合には、再発行可能ですか。

保管証の再発行はできませんので、大切に保管してください。

なお、保管証があるとその他の手続がスムーズですが、保管証がない場合でも手続は可能です。

保管の申請をした後に、遺言書の内容を変更したい場合はどうすればよいですか。

保管の申請の撤回をして遺言書の返還を受けて、遺言書の内容を変更してから、再度保管の申請をしていただくことを推奨します。

撤回をせずに新たな遺言書を預けることも可能です。いずれの場合も改めて保管の申請の手数料がかかります。

遺言書の保管の申請の撤回を行った場合に、その遺言は無効になるのですか。

遺言書の保管の申請の撤回は、法務局(遺言書保管所)に遺言書を預けることをやめることであり、その遺言の効力とは関係がありません。

遺言書を閲覧したいのですが、遺言書が保管されている法務局(遺言書保管所)が遠方の場合もその法務局(遺言書保管所)へ行かなければなりませんか。

申請書の閲覧方法として、遺言書原本を閲覧する方法のほか、モニターで遺言書を閲覧する方法があります。

モニターの方法による場合には、全国のどこの法務局(遺言書保管所)においても閲覧可能となります。

遺言書情報証明書を取得したいのですが、自分で法務局(遺言書保管所)へ行かなければなりませんか。

保管の申請の場合と異なり、遺言書情報証明書等の交付については、ご自身で法務局(遺言書保管所)の窓口に出向いて請求するほか、郵送による請求や、法定代理人による手続も可能です。

なお、保管の申請書や請求書等の書類については、司法書士等にその作成を依頼することができます。

遺言書情報証明書はどのような手続に使用できますか。

今まで遺言書の原本を必要としていた相続登記手続等や銀行での各種手続について、遺言書情報証明書を使用していただくことを想定しています。

家族(相続人)は法務局(遺言書保管所)に保管されている遺言書を返却してもらうことができますか。

法務局(遺言書保管所)に保管されている遺言書については、家族(相続人)であっても返却を受けることはできません。

内容を確認するには、遺言書情報証明書の交付の請求又は遺言書の閲覧をしてください。

予約せずに直接法務局(遺言書保管所)に行った場合には申請を受け付けてもらえますか。

各種申請、請求に当たっては原則として予約が必要です。

予約せずに来庁された場合、長時間お待ちいただいたり、その日の手続ができない場合があります。

自筆証書遺言を作成したら必ず法務局(遺言書保管所)に預けなければならないのですか。

本制度は、自筆証書遺言に係る遺言書について、法務局(遺言書保管所)に保管をするという選択肢を増やすものであり、従来どおり自宅等で保管していただくことも可能です。

自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選べばよいですか。

自筆証書遺言と公正証書遺言の主な特徴については、パンフレットに記載していますので、参考にしてください。

なお、どちらを選ぶべきかは、ご本人の判断ですので、法務局(遺言書保管所)ではお答えできません。


(※)
本記事は、当事務所内の業務において参照するための備忘録です。
情報を掲載する際は、細心の注意を払っておりますが、それらの情報に関して正確性、信頼性を保証するものではなく、一切の責任を負いません。
参考にされる場合は、通達等をご自身で確認してください。

相談は無料です

不動産に関する遺産相続・遺産分割・相続放棄・相続問題など、相続登記に関する相談を無料で承ります。お電話(0880-34-3822)・ご来所でもOK。お気軽にお問い合わせください。
こちらからどうぞ → メール相談・お問い合わせ


シェアする

フォローする