遺言がある場合とない場合ではどう違う?

相続をめぐるトラブルは、遺言書がなかったことが原因となる場合が多くあります。

亡くなったKさんには子供も直系尊属もいなかったため、遺産を妻とKさんの兄弟が相続することになりました。
兄弟の中には死亡している者もいて、その子供が相続人になっており、調べると法定相続人は30人にも達することがわかりました。

このような、子供のいない夫婦の場合、夫が生前に「妻に全財産を相続させる」との遺言書を書いておけば、妻は全財産を誰に遠慮することなく相続できるのです。

遺言とは、自分の考えで自分の財産を処分できる明確な意思表示です。
遺された者の幸福を考える上でも、遺言は元気なうちにしっかりと書いておくべきです。
 

 
(※)
今回の場合は、相続人が妻と兄弟姉妹です。
もし、夫が「妻に全財産を譲る」という遺言書を残しておけば、兄弟姉妹には遺留分がない(民法1028条)ので、妻は全財産を相続することができたのです。

しかし、今回は遺言をしていなかったので、妻は30人超の相続人と遺産分割協議をすることになります。
これだけの人数がいると、話し合いで遺産分割協議が整うことはかなり困難が予想され、最終的には家庭裁判所での遺産分割調停、審判で決まることが多いです。

30人超の人数の遺産相続は、レアなケースと思われるかもしれませんが、相続登記をせずに2代、3代と放置していたらこのくらいの人数になるケースはあります。

また、これだけの相続人がいると、認知症などで意思表示をできない相続人や、行方不明の相続人も出てきますので、遺産分割協議の前に、家庭裁判所に成年後見人の選任、不在者財産管理人の選任をしてもらい、その人を含めて遺産分割協議をすることになります。
 
 
(※)直系尊属
 自分を中心として、父母・祖父母・曾祖父母・子・孫・曽孫という縦の関係を直系といい、自分より上の世代を尊属、下の世代を卑属という。
今回の場合、父母・祖父母・曾祖父母を指す。

(※)法定相続人
被相続人に、子供・直系尊属がいない場合は、兄弟姉妹又は兄弟姉妹の子が相続人となる。

(※)遺留分 民法1028条
(遺留分の帰属及びその割合)
第1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
 
 
平成29年5月の法定相続情報証明制度の施行に伴い、この制度に関するページを新設した、司法書士アクセスブック「よくわかる相続」の改訂版が出たので、その紹介と、(※)以下にその内容について少しコメントしました。

PDFデータとして日本司法書士連合会のホームページにありますので、ご利用ください。
司法書士アクセスブック「よくわかる相続」

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この記事を書いた人

昭和58年開業以来、はや30年以上経ちました。
 当事務所は、これまで地元幡多地区(四万十市、黒潮町、土佐清水市、三原町、宿毛市)の方を中心に、遺産相続のご相談にお答えしてまいりました。
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