こんにちは、司法書士の小谷龍司(おだに りゅうじ)です。
今年も残すところあとわずかとなりました。年末年始にご家族が集まるタイミングで、実家のことや相続の話が出ることも多いのではないでしょうか。
最近、私の事務所でも非常によくいただくご相談があります。それは、「相続登記の義務化」についてです。
まずは、よくあるご相談事例(Q&A)をご紹介します。「自分も当てはまるかも?」という方は、ぜひ読み進めてみてください。
【Q&A】よくある相続のご相談
Q. ニュースで「相続登記が義務化された」と聞きました。実家の土地が、何十年も前に亡くなった祖父の名義のままになっています。これも義務化の対象ですか?罰則はあるのでしょうか?
A. はい、過去の相続も対象になります。放置すると過料(罰金のようなもの)の対象になる可能性があります。
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、これより以前に発生していた相続(過去に亡くなった方の名義のままの不動産)についても、義務化の対象となりました。
具体的には、以下のポイントに注意が必要です。
- 3年以内の申請義務
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をする必要があります。 - 10万円以下の過料
正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。 - 放置するリスク
罰則だけでなく、放置している間にさらに相続人が亡くなり、関係者が数十人に増えてしまう「ねずみ算式」の複雑化を招く恐れがあります。こうなると、解決までに膨大な時間と費用がかかってしまいます。
「やらなきゃいけないのは分かったけれど、誰に相談すればいいのか分からない…」
「近くに司法書士事務所がない…」
そう悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
「司法過疎」と私たちの取り組み
皆様は「司法過疎(しほうかそ)」という言葉をご存じでしょうか。
これは、弁護士や司法書士などの法律専門家が極端に少なく、市民の皆様が法的なサービスを受けにくい地域のことを指します。「相談したくても、相談先が遠すぎて行けない」という状況は、皆様が正当な権利を守る機会を奪う深刻な問題です。
私たち司法書士は、都市部だけでなく、どの地域に住んでいても等しく法的サービスが受けられるよう、「身近なくらしの中の法律家」として、こうした地域間格差の解消に取り組んでいます。
その具体的な活動の一つが、今回ご案内する「司法書士県境無料相談会」です。
12月20日(土) 司法書士県境無料相談会のお知らせ
四国の県境地域にお住まいの皆様へ、高知県、愛媛県、徳島県の司法書士会が協力して無料相談会を開催します。
県境相談会の詳細は高知県司法書士会をご確認ください。
普段、専門家に相談する機会が少ない地域の方々こそ、この機会をぜひご利用ください。「相続登記」はもちろん、借金問題、成年後見、境界トラブルなど、様々なお悩みに司法書士がお答えします。
今回は「久万高原町(愛媛・高知県境)」と「海陽町(徳島・高知県境)」の2会場で同時開催されます。
① 久万高原町会場(予約制)
愛媛県と高知県の県境にお住まいの方向けの相談会です。
- 日時: 令和7年12月20日(土) 10時~15時
- 場所: 久万高原町ふるさと創造の館こかげ(愛媛県上浮穴郡久万高原町柳井川950番地)
- 相談内容: 相続、登記、裁判手続、成年後見、金銭トラブル、その他
- 予約について: 事前予約制です。
- 予約締切:12月17日(水)まで
- 予約・問合せ:愛媛県司法書士会事務局(TEL 089-941-8065)
- ※積雪の状況によっては電話相談に変更となる可能性があります。
② 海陽町会場(予約不要)
徳島県と高知県の県境にお住まいの方向けの相談会です。
- 日時: 令和7年12月20日(土) 10時~15時
- 場所: 海陽町宍喰老人憩いの家(徳島県海部郡海陽町宍喰浦字宍喰383)
- 相談内容: 相続、登記、裁判手続、成年後見、金銭トラブル、その他
- 予約について: 予約不要です。お気軽にお越しください。
お一人で悩まず、まずはご相談を
相続の問題は、放っておけばおくほど解決が難しくなります。「まだ大丈夫」と思わずに、専門家の知恵を借りてください。
県境という立地上、普段は「高知の先生にお願いすべきか、愛媛(徳島)の先生にお願いすべきか…」と迷われることもあるかもしれません。今回の相談会は各県の司法書士会が連携・共催していますので、安心してお越しいただけます。
皆様のご来場をお待ちしております。
【参考】相続登記に関するよくある疑問
Q. 相続で10年放置したらどうなる?
A. 相続登記義務化による過料の対象となる可能性があります。また、遺産分割において「特別受益」や「寄与分」の主張ができなくなる(法定相続分での分割となる)など、権利主張に制限がかかるデメリットが生じます。
Q. 過去の相続登記はいつまでできますか?
A. 手続き自体はいつでも可能ですが、義務化のルール上、過去の相続については「令和9年(2027年)3月31日」が猶予期間の期限です。これを過ぎると過料の対象となる可能性があるため、早めの申請が必要です。
Q. 相続登記義務化 過料 何回?
A. 1回払えば終わりとは限りません。過料を支払っても登記義務自体は消滅しないため、催告を受けても放置し続けた場合、繰り返し過料を科される可能性があります。
Q. 相続登記をせずに死亡した場合はどうなりますか?
A. 亡くなった方の相続人へと権利が移る「数次相続」が発生します。関係する相続人の人数がねずみ算式に増えて権利関係が複雑化し、解決までの手間や費用が大幅に増加する原因となります。
