高知県四万十市の司法書士、小谷龍司です。
今回は、日々の業務の中で本当によくご相談いただく「相続登記、結局なにから手をつければいいの?」という疑問への回答と、その解決の糸口となる無料セミナー・相談会のご案内をいたします。
「義務化されたとは聞くけれど、難しそうで後回しにしている」
「役所から通知が来たけれど、意味がよくわからない」
そんな不安を抱えている方に向けて、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
【結論】まずは「誰が相続人か」と「不動産はどこか」の把握から
「何から始めればいい?」という問いへの答えは、法務局へ行くことでも、申請書を書くことでもありません。
- 「誰が引き継ぐ権利を持っているか(相続人の調査)」
- 「亡くなった方の名義の不動産がどこにあるか(遺産の調査)」
この2つを明確にすること、これが全てのスタートラインです。
いきなり手続きをしようと焦る必要はありません。まずは、お手元にある「固定資産税の通知書」を確認したり、ご家族で「おじいちゃん名義の土地、どうなってる?」と話し合ったりすることから始めてください。
もし、話し合いが難しかったり、何代も前の名義のまま放置されていたりする場合は、専門家の知恵を借りるのが一番の近道です。そこで、高知県司法書士会が主催する「無料セミナー&相談会」をご活用いただきたいのです。
令和8年1月31日(土)無料セミナー&相談会のご案内
高知県司法書士会では、高知地方法務局と共催で、相続登記に関する疑問を一気に解決できるイベントを開催します。「司法書士事務所に電話をするのは敷居が高い」と感じる方も、この公的な相談会なら気軽にご参加いただけるはずです。もちろん予約は不要です。
■日時
令和8年(2026年)1月31日(土) 10:00 ~ 13:00
■費用
無料
■予約
不要(当日直接会場へお越しください)
セミナー(高知会場のみ)
専門家が「相続登記の申請義務化」と「相続の基礎知識」について、わかりやすく解説します。
会場:ちより街テラス「ちよテラホール」(高知市知寄町2丁目1番37号)
無料相談会(県内5会場で同時開催)
セミナーと同時に、県内5箇所で司法書士による対面相談会を行います。
四万十市・幡多地域にお住まいの方は、地元の会場へお越しください。
【四万十市会場】
場所:四万十市社会福祉協議会(研修室、小会議室、和室)
住所:四万十市右山五月町8番3号(四万十市社会福祉センター内)
【その他の会場】
高知市:ちより街テラス(貸会議室1・2)
安芸市:安芸市民会館(2階4号室)
南国市:日章福祉交流センター(1階 会議室1)
土佐市:複合文化施設つなーで(3階大会議室1)
>> 令和8年1月31日 無料セミナー&相談会の詳細(高知県司法書士会HP)
背景・制度の整理:なぜ今、義務化なのか
なぜ今このような相談会が開かれているのか、少し背景をご説明します。
1. 所有者不明土地問題と義務化のルール
日本では現在、所有者が誰かわからない土地が増え続け、災害復旧やまちづくりの妨げとなっています。これを解消するため、令和6年4月1日以降、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられました。
ここで重要なのは、過去の相続(令和6年4月1日以前に発生したもの)についても対象になるという点です。過去の相続については、「令和9年(2027年)3月31日」までの猶予期間を経て義務化の対象となります。
2. 正当な理由なき場合の過料
正当な理由がないのに申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
過料(かりょう)とは?
行政上の義務違反に対して科される金銭的な負担のことです。刑事罰(前科がつく罰金)とは異なりますが、金銭を納付しなければなりません。
「罰則」と聞くと怖いですが、この制度の目的は罰金を取ることではありません。「権利関係をはっきりさせて、安心して暮らせる社会にすること」が目的です。
「3年以内に遺産分割協議(話し合い)がまとまらないと罰金になるの?」と心配される方がいますが、ご安心ください。そのような場合のために「相続人申告登記」という制度が新設されました。
これは「私が相続人です」と法務局に申し出るだけの簡易な手続きです。これを行えば、とりあえず申請義務を果たしたことになり、過料を避けることができます。もし話し合いが長引きそうな場合は、相談会でこの制度についてもご質問ください。
実務でよくある「誤解」と注意点
私が日々、四万十市・幡多地域で相談を受けている中で、非常によくある「勘違い」をいくつかご紹介します。これらに当てはまる方は、ぜひ相談会にお越しください。
誤解①「権利証(権利書)があるから、自分のものでしょう?」
→ いいえ、違います。
権利証(登記済証)を持っていることと、名義変更(相続登記)が済んでいることは別問題です。権利証を持っていても、法務局の記録(登記簿)が亡くなった方の名前のままであれば、それは法的にはまだあなたの所有ではありません。
誤解②「遺産分割協議書を作ったから安心」
→ 手続きはまだ終わっていません。
親族で話し合ってハンコを押した「遺産分割協議書」。これを作成しただけで手続き完了と思われている方が多いですが、この書類を使って法務局へ申請をして、初めて名義が変わります。
誤解③「田舎の山林で価値がないから、放っておいてもいい」
→ 義務化により、放置できなくなりました。
以前は「売れる土地じゃないし、お金をかけてまで名義変更しなくていいか」という判断もありました。しかし、義務化以降は、土地の価値に関わらず手続きが必要です。むしろ、価値が低い土地ほど、後の世代に負担を残さないための早めの対処が重要になります。
まとめ
相続登記は、ご家族の歴史や財産を守るための大切な手続きです。
「面倒くさい」と感じるかもしれませんが、専門家と一緒に整理すれば、必ず解決の道筋は見えてきます。
- まずは「相続人」と「不動産」の把握から。
- 令和6年4月から義務化されています(過去の相続も対象)。
- 放置すればするほど、手続きは複雑になります。
一人で悩まず、まずは無料の相談会を利用して、現状を整理してみませんか?
令和8年1月31日(土)、四万十市社会福祉協議会(または各会場)で、担当司法書士がお待ちしております。
よくある質問(FAQ)
最後に、相続登記や義務化についてよくいただく質問をまとめました。
- Q. 過去に亡くなった親の土地も、義務化の対象になりますか?
- A. はい、対象になります。令和6年4月1日より前に発生した相続であっても、登記が済んでいなければ義務化の対象となります。この場合、猶予期間である令和9年(2027年)3月31日までに手続きをする必要があります。
- Q. 司法書士に依頼せず、自分で手続きすることはできますか?
- A. はい、可能です。ご自身で必要書類を集め、申請書を作成して法務局へ提出することができます。ただし、相続関係が複雑な場合や、古い土地で権利関係が不明確な場合は、専門的な知識が必要になることもあります。
- Q. 登記にかかる費用はどのくらいですか?
- A. 登録免許税などの実費がかかります。司法書士に依頼する場合の報酬は、各司法書士事務所によって異なるため一律ではありません。多くの事務所では事前の見積もりを無料で行っています。相談会の際、担当の司法書士に「もし依頼したらいくらくらいか?」と尋ねていただければ、一般的な目安を教えてもらえる場合があります。
- Q. 権利証(登記済証)が見当たらないのですが、手続きできますか?
- A. はい、相続登記の手続きにおいては、基本的に権利証は不要です(被相続人の権利証を紛失していても手続き可能です)。ご安心ください。